『きことわ』 朝吹真理子 ***

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貴子(きこ)と永遠子(とわこ)。葉山の別荘で、同じ時間を過ごしたふたりの少女。最後に会ったのは、夏だった……。25年後、別荘の解体をきっかけに、ふたりは再会する。ときにかみ合い、ときに食い違う、思い出。境がゆらぐ現在、過去、夢。記憶は縺れ、時間は混ざり、言葉は解けていく――。やわらかな文章で紡がれる、曖昧で、しかし強かな世界のかたち。小説の愉悦に満ちた、芥川賞受賞作。(「BOOK」データベースより)


芥川賞に選ばれた頃は、読む気になれなかったのですが、今頃になって読んでみるかと思い立ちました。受賞時の賛辞も、誹謗中傷も理解できますが今中立的な立ち位置で読むとやはり芥川賞にふさわしい魅力のある作品だと思います。過去と夢と現在を軽やかに行き来してエピソードが語られていきます。これといった事件が起こるわけではありませんが、語り手である永遠子と一緒に過去と現在をさまよう読書でした。残念ながら、朝吹さんのような環境で育たないと、こんな本は紡ぎ出せないなと。

2018-023