2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『夜の谷を行く』 桐野夏生 ***

連合赤軍がひき起こした「あさま山荘」事件から四十年余。 その直前、山岳地帯で行なわれた「総括」と称する内部メンバー同士での批判により、12名がリンチで死亡した。 西田啓子は「総括」から逃げ出してきた一人だった。 親戚からはつまはじきにされ、両親…

『決着―吉原裏同心〈14〉』 佐伯泰英 ***

一時は看板花魁まで登りつめた白川が斬殺された。吉原裏同心・神守幹次郎らが調べを進めると、哀しき過去の因縁が。一方、江戸の経済を牛耳る札差筆頭行司の座を狙う新興札差・香取屋武七との闘いに巻き込まれた幹次郎と汀女。香取屋の背後にはこの世にいな…

『布石―吉原裏同心〈13〉』 佐伯泰英 ***

江戸の札差を束ねる筆頭行司の伊勢亀半右衛門に薄墨太夫との川遊びに誘われた神守幹次郎・汀女夫婦。だがこれを機に新興札差・香取屋武七の魔手が吉原会所の面々に忍び寄る。江戸の経済を牛耳る札差筆頭行司の座を巡り、半右衛門と暗闘を繰り広げる武七の背…

『再建―吉原裏同心〈12〉』 佐伯泰英 ***

仮宅明け間近の吉原に、二人の遍路が野地蔵を置いた。先の大火で死んだ姉(女郎)の供養だという。だが、死んだはずの女郎を江ノ島で見たという男が現れた。足抜か?神守幹次郎は、会所の頭取の命で番方の仙右衛門と共に現地へ赴き、女郎に連れ添う居合いの達人…

『京の縁結び 縁見屋の娘』 三好昌子 ***

「縁見屋の娘は祟りつき。男児を産まず二十六歳で死ぬ」―江戸時代、京で口入業を営む「縁見屋」の一人娘のお輪は、母、祖母、曾祖母がみな二十六歳で亡くなったという「悪縁」を知り、自らの行く末を案じる。謎めく修行者・帰燕は、秘術を用いて悪縁を祓える…

『絶対音感』 最相葉月 *

「絶対音感」とは、ある音を聞いたときに、ほかの音と比べなくてもラやドといった音名が瞬時にわかる能力である。これがあると、一度曲を聴いただけで楽器を弾いたり楽譜に書いたりでき、小鳥のさえずりや救急車のサイレンの音程がわかったりもする。過去の…

『異館―吉原裏同心〈11〉』 佐伯泰英 ***

真鶴から江戸に戻った神守幹次郎を謎の剣客が襲う。折しも吉原では、京の大火で移転してきた胡散臭い商人が薄墨太夫に接触。そのうえ武家客への辻斬りが横行していた。新たな魔手が吉原に!?会所の意を受けた幹次郎は、身代わりの左吉の助力を得て探索に奔る…

『遠縁の女』 青山文平 ***

『機織る武家』血の繋がらない三人が身を寄せ合う、二十俵二人扶持の武家一家。生活のため、後妻の縫は機織りを再開する。『沼尻新田』新田開発を持ちかけられ当惑する三十二歳当主。実地検分に訪れた現地のクロマツ林で、美しい女に出会う。『遠縁の女』寛…

『沽券―吉原裏同心〈10〉』 佐伯泰英 ***

天明八年の正月早々、吉原の引手茶屋で沽券状を狙った事件が頻発した。廓の危難に奔走する吉原会所と神守幹次郎の前に、権利を売り姿を消した茶屋夫婦の刺殺体が!残る二人の娘の行方を追う幹次郎たちは、巨漢の武芸者を引き連れ、沽券状を買い集める黒幕の年…

『球道恋々』 木内昇 **

金なし、地位なし、才能なし―なのに、幸せな男の物語。時は明治39年。業界紙編集長を務める宮本銀平に、母校・一高野球部から突然コーチの依頼が舞い込んだ。万年補欠の俺に何故?と訝しむのもつかの間、後輩を指導するうちに野球熱が再燃し、周囲の渋面と嘲…

『虹を待つ彼女』 逸木 裕 **

二〇二〇年、人工知能と恋愛ができる人気アプリに携わる有能な研究者の工藤は、優秀さゆえに予想できてしまう自らの限界に虚しさを覚えていた。そんな折、死者を人工知能化するプロジェクトに参加する。試作品のモデルに選ばれたのは、カルト的な人気を持つ…

『優しき悪霊 溝猫長屋 祠之怪』 輪渡颯介 *

十二歳の忠次たち四人は、長屋の祠をお参りしてから「幽霊が分かる」ように。空き家となったお店で、彼らがかくれんぼをしていると幽霊が「おとじろう」と告げる。するとその店の娘と縁談のあった乙次郎が行方不明に。幽霊の正体は?告げた名にどんな意味が?…

『冬雷』 遠田潤子 ***

大阪で鷹匠として働く夏目代助。ある日彼の元に訃報が届く。12年前に行方不明になった幼い義弟・翔一郎が、遺体で発見されたと。孤児だった代助は、日本海沿いの魚ノ宮町の名家・千田家の跡継ぎとして引き取られた。初めての家族や、千田家と共に町を守る鷹…

『仮宅―吉原裏同心〈9〉』 佐伯泰英 ***

虚栄と粋と張りを競い合う吉原が炎上し、仮宅商いを余儀なくされた師走。遊女・花蕾が行方を断った。その後、他の妓楼からも遊女たちが姿を消す。楼主たちが騒然とするなか、花蕾の死体が築地川に浮かんだ。廓の用心棒・神守幹次郎は、会所の男衆や身代わり…

『炎上―吉原裏同心〈8〉』 佐伯泰英 ***

廓の用心棒・神守幹次郎が通う道場に、忽然と現れた猿を連れた三人の武芸者。男たちは町道場破りを繰り返し、さらに廓の遊女を殺したうえ、金を奪って逃げた。幹次郎と吉原会所の男衆が必死の探索を続ける前に、突如、女頭領に率いられた謎の白装束集団が!背…

『ライプツィヒの犬』 乾緑郎 ***

気鋭の劇作家内藤岳は、知己を得た世界的劇作家ヘルムート・ギジに師事するため、ドイツに渡った。ギジは冷戦時代、旧東ドイツで体制を批判するシェイクスピアの翻案作品で名を馳せていた。その彼が、三十年ぶりに『ロミオとジュリエット』の翻案『R/J』を執…

『ダック・コール』 稲見一良 ***

鳥の狩猟をはじめたばかりの中年男が、東京近郊の山中で密猟の天才少年と出会う。パチンコで見事にハトを射止める少年と狩猟に新たな生きがいを見出していく男が企てる一大犯罪計画をさわやかに描きあげる「密猟志願」など、シリアスで淡彩な青春小説から、…